AutoGluon時系列分析 ビジュアルリファレンス

AutoGluon時系列分析 ビジュアルリファレンス

AutoGluon時系列分析 ビジュアルリファレンス

仕組み・モデル・実践ノウハウの全て

1. AutoGluonの哲学:なぜ強力なのか?

AutoGluonの真の強さは、単一の優れたモデルを使うことではなく、性質の異なる多様なモデル群を試し、その予測を自動で巧みに組み合わせる(アンサンブルする)能力にあります。

AutoGluonは、以下の3つの要素を自動化する「熟練データサイエンティスト」と考えることができます。

🤖

多様なモデル群

統計モデルから最新の深層学習まで、網羅的に試行します。

🧠

高度な自動処理

特徴量エンジニアリングや検証プロセスを自動で最適化します。

🏆

アンサンブル学習

モデル達をチームとして連携させ、単体を超える精度を叩き出します。

2. AutoGluonの内部処理フロー

`predictor.fit()` の中で何が起きているか?

入力: TimeSeriesDataFrame
(時間・項目ID・目的変数・共変量を持つデータ)
Step 1: 自動特徴量エンジニアリング
(日付特徴量、ラグ、移動平均などを自動生成)
Step 2: モデルの学習とローリングウィンドウ検証
(時間軸をずらしながらモデルの真の実力を評価)
Step 3: アンサンブル学習
(優秀なモデルの予測を組み合わせて最終モデルを構築)
出力: 学習済み Predictor オブジェクト
(未来を予測する準備が整ったモデル)

詳細:ローリングウィンドウ検証の仕組み

AutoGluonは、提供された学習データをさらに分割し、時間軸をずらしながら「学習→予測→評価」を繰り返します。これにより、信頼性の高い性能評価を実現します。

検証ウィンドウ 1

学習
検証

検証ウィンドウ 2 (時間軸をスライド)

学習 (データ増加)
検証

3. AutoGluonのモデル動物園(Model Zoo)

AutoGluonは、問題の性質に応じてこれらのモデルを自動で選択し、試行します。

📈 統計モデル

AutoETS, AutoARIMA, Thetaなど。明確なトレンドや季節性を持つデータに堅牢です。

📊 テーブルモデル

RecursiveTabular, DirectTabular。LightGBM等を内部で使用し、大量の追加特徴量(共変量)を扱うのが得意です。

🧠 ディープラーニングモデル

DeepAR, PatchTST, TemporalFusionTransformerなど。複雑な非線形パターンを捉え、長期予測に優れます。

🌍 基盤モデル

Chronos。様々なデータで事前学習された巨大モデル。Fine-tuningにより高い精度を発揮します。

4. 性能向上のための実践的ノウハウ

Tip 1: `presets` を使い分ける

まずはプリセットで全体像を掴むのが基本戦略です。

  • medium_quality: 最初のベースライン確認用。高速。
  • high_quality: 精度と速度のバランスが良い。
  • best_quality: 時間をかけて最高精度を追求。コンペの基本。

Tip 2: GPUメモリ不足 (CUDA OOM) を回避する

ディープラーニングモデル学習時の最頻出エラーです。hyperparameters引数でbatch_sizeを明示的に小さくすることで回避します。


# GPUモデルのバッチサイズを小さく設定
hyperparameters = {
    "DeepAR": {"batch_size": 32},
    "TiDE": {"batch_size": 32},
    # モデル名は基本名で指定
    "Chronos": {"batch_size": 16},
}

predictor.fit(..., hyperparameters=hyperparameters)
        

Tip 3: `refit_full=True` でモデルを仕上げる

コンペ提出用の最終モデル作成時に推奨されるオプションです。検証に使ったデータも含めた全学習データで再学習するため、モデルの汎化性能が向上します。

学習 (評価時)
検証 (評価時)
最終学習 (refit_full=True)

Tip 4: `known_covariates` を最大限活用する

予測したい未来の期間で値が確定している特徴量(例: 天気予報、祝日、セール期間)は、known_covariatesとして与えることで予測精度を劇的に向上させることができます。これはAutoGluonの性能を引き出す上で最も重要な要素の一つです。

コメント

タイトルとURLをコピーしました